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栄養剤の点滴で寿命はどれくらい変わる?点滴の効果を徹底解説!

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食材
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あなたは「点滴」という言葉から、どんなイメージを浮かべますか?

「打つとすぐ元気になる」、「効果の高い栄養剤」といった想像をされるのではないでしょうか。

私は仕事でよく点滴を投与しますが、多くの方がこうしたイメージを持たれています。

点滴=万能薬のように思われている方も、中にはいらっしゃるかもしれません。「点滴したら寿命って延びるの?」と聞かれることもあります。

結論からお伝えすると、栄養剤や薬剤の点滴で必ずしも寿命を延長できる訳ではありません。

意外と知られていない点滴について、今回は特に「栄養剤」にまつわることを解説していきます。

この記事に書かれていることはあくまで一般論ですので、寿命についてや治療方針などは医師とご相談くださいね。

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栄養剤を点滴すると寿命はどれくらい長くなる?

点滴は「輸液」とも呼ばれ、不足している水分や栄養を血管から投与し、短時間で全身に行き渡らせることができます。

広島県江田島市のしまの病院おおたにが発行しているガイドブックによると、栄養剤を点滴で投与した場合、平均2〜8ヶ月ほど寿命が延びると言われています。

その人の栄養状態や栄養剤の種類によって効果も変わるため、寿命への影響期間も変動します。

そもそも点滴ってどんなものか、知らないことが多いかも……?

点滴とはどんな目的で使用されるのか、投与時の効果などについて、次項から詳しくご紹介していきますね。

脱水治療と栄養摂取の目的で点滴は使用される

一般的な点滴の場合、医療現場では大きく分けて2つの目的で使用されます。

  1. 脱水など危険な状態に対する治療
  2. 口から食事が摂れない場合に栄養剤や薬剤を投与する

どちらの目的も「患者様の状態を少しでも改善するため」という点が共通しています。

私はどちらの点滴も患者様へ投与した経験がありますが、状態が少しずつ良くなる場合もあれば、あまり効果が出ない場合もありました。

①の脱水症状などに対して投与した場合、不足した水分や電解質が体内に素早く補給されるため、比較的治療の効果が出やすいです。

私が病棟で勤務していた際は、こちらの目的で医師からの点滴指示が多かったです。

多くの方が1週間ほどで元気になられていたので、新人の頃に「水分って本当に大事なんだな……」と実感しました。

栄養摂取には高カロリー輸液が使用される場合が多い

一方で②のような栄養状態改善を目的とする点滴の場合、「高カロリー輸液」と呼ばれる栄養剤が使用されるケースが多いです。

高カロリー輸液には多くのブドウ糖やビタミンが含まれ、口から食事を食べられない状態でも最低限のカロリーと栄養を摂取できます。

ちなみに高カロリー輸液は「エルネオパNF2号1,000ml」というものが、医療現場でよく使用されています。

製造元の大塚製薬によると、1,000ml中カロリーが約560kcal、ブドウ糖が約120g含まれています。

ブドウ糖1gの摂取で血糖値が5mg/dL上昇すると言われています。

急な上昇を防ぐため、24時間かけてゆっくり投与するのが基本です。

栄養が豊富な高カロリー輸液ですが、濃度が高いため「中心静脈」と呼ばれる太い血管からしか投与することができません。

「中心静脈」?血管にも種類があるの?

栄養剤の点滴は投与する血管によって種類が違う

人間の血管には、大きく分けて「末梢静脈」と「中心静脈」の2種類があります。

「末梢静脈」は腕や足などにある細い血管で、「中心静脈」は首や鎖骨、太ももの付け根などにある太い血管を指します。

株式会社メディコン

上のイラストを見ると、腕と体の中心にある血管の太さの違いがよく分かると思います。

中心静脈は心臓の近くにあり、全身の血流が集約される重要な血管です。

そのため、腕や足の血管に比べると太くなっています。

広島県江田島市のしまの病院おおたにによると、栄養剤を末梢静脈から投与した場合は平均2〜3ヶ月寿命が延びると言われています。

一方で中心静脈から栄養剤を投与した場合、平均6〜8ヶ月ほど寿命が延びると言われています。

次項から、末梢静脈点滴と中心静脈点滴の特徴をご紹介します。

栄養剤の点滴は末梢静脈からの投与がスタート

末梢静脈は、主に腕や足などにある細い血管を指します。この血管から栄養剤を投与するものが「末梢静脈栄養」に分類されます。

「点滴」という言葉を聞いて多くの方がイメージされるのが、こちらだと思います。

主に水分や電解質、タンパク質や糖質・脂質などの栄養、ビタミン、微量元素電解質などを投与することができます。

末梢静脈と呼ばれる血管には、以下のような特徴があります。

  • 血管が細いため、栄養剤や薬による刺激を受けやすい
  • 何度も針を刺していると血管を傷つけ、だんだんと針が入りにくくなる
  • 年齢や病気によって血管がもろくなっている場合、点滴投与に血管が耐えられず漏れることがある

こうした特徴があるため、末梢血管からの点滴は「口から食事ができない期間が1週間~10日まで」を目安として考えられています。

まずは末梢静脈から短期間で点滴を投与し、経過を見る場合がほとんどです。

こちらの点滴は脱水症状や、一時的な食事摂取量の減少に使用される場合が多いです。
点滴を開始して、1週間程度で元気になられるケースがほとんどでした。

1週間以上経っても、元気にならない場合はどうするの?

末梢静脈から栄養を投与して1週間以上経過しても効果がない場合は、中心静脈からの点滴投与が検討されます。

栄養剤の長期点滴には中心静脈が使用される

中心静脈は、首や鎖骨、太ももの付け根にある太い血管を指します。

こちらの点滴は、口からの食事が1週間以上できないなど、長期的に点滴での栄養剤投与を必要とする場合に適応されます。

私たちが生きていくためには、カロリーだけでなく糖分や塩分、アミノ酸やビタミン類などの栄養素も必要です。

口からの食事摂取ができない期間が長引くほど、点滴で補充しなければならないものも増えていきます。

中心静脈と呼ばれる血管には、以下のような特徴があります。

  • 心臓の近くにあり、全身からの血流が集約されるため血液量が豊富
  • 末梢静脈よりも血液の流れるスピードが速い

このような特徴により栄養豊富な高カロリー輸液を投与しても、血液で薄められるため血管への影響は少ないとされています。

細い末梢血管から投与すると痛みや炎症を起こす可能性があるため、高カロリー輸液は必ず中心静脈から投与します。

でも、中心静脈って太い血管なんでしょう?
そんなところに針なんて刺したら、大出血しそうだけど……

「中心静脈にどうやって針を刺すの?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。実は、中心静脈からの点滴投与にはある器具が使用されます。

中心静脈からの点滴にはポートが造設される

中心静脈は、心臓近くにある太い血管です。全身の血流が集約される場所で、私たちの体の中でも特に重要な血管です。

「針なんて抜き刺ししたら、大出血するのでは?」と不安になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

中心静脈への点滴投与には「カテーテル」という細い管と、「ポート」という機器が使用されます。

東戸塚記念病院

上の画像が「ポート」と呼ばれるものです。これを皮膚の下に埋め込み、「カテーテル」は直接中心静脈に挿入されます。

埼玉県戸田市 公平病院

仕組みとしてはポート本体からカテーテルを伝って、栄養剤や薬剤が中心静脈の中に入っていくようになっています。

ポートの「セプタム」と呼ばれるシリコンゴムの部分に専用の針を刺すため、血管へ直接刺さずに点滴を投与することができます。

点滴の度に大出血……なんてことはないのね。

ポートの埋め込みには手術が必要ですが、部分麻酔で30分~1時間程度で終了します。

体の状態によりますが、日帰りか1泊2日の場合が多いです。

ただ、皮膚の上から針を刺すのは末梢静脈と変わりません。私も何度かポートから針を刺していますが、やはり多少の痛みを訴えられる方が多いです。

点滴で栄養摂取してもずっと空腹感があるのでは?

点滴で栄養が摂れることはお分かり頂けたと思いますが、「結局食べないしお腹はずっと空くのでは?」と疑問に思いますよね。

私たちが空腹を感じるのは胃の容量ではなく、実は「血糖値の変動」を脳がキャッチすることで起こります。

私たちの空腹感や食欲は、脳の「視床下部」という部分でコントロールされています。

血糖値が下がると、摂食中枢と呼ばれる部分が「エネルギーが足りていないから、何か食べて補給しなさい」と命令を出します。

すると私たちの体は空腹を感じるようになり、食事を摂ろうとします。

食事を食べて血糖値が上昇すると、今度は満腹中枢と呼ばれる部分が「十分エネルギーを補充できたから、もう食べないで」と命令を出し、満腹だと感じます。

食べてもすぐにお腹が空く時期がありましたが、ストレスなどで血糖値が乱れていたのが原因だと思います。

中心静脈栄養は血糖値が安定し空腹感がない

中心静脈から栄養剤を投与する場合、基本的には1つの栄養剤を24時間かけてゆっくりと投与します。

つまり栄養や糖分が常に補充されている状態なので、血糖値が安定します。

血糖値が安定しているため摂食中枢から命令は出されず、空腹を感じません。

中心静脈から栄養剤を投与していた患者様にお話をうかがったことがあるのですが、空腹感を全く感じておられませんでした。

ネットでも、同じような経験をされた方がいらっしゃるようです。

人間の体の仕組みって、すごいのね……!

栄養剤の点滴にかかる時間は人それぞれ

点滴の内容や年齢、その方の身体の状況によって、点滴の投与時間や速さは異なります。

点滴は血管に直接栄養を投与するため、全身に素早く栄養を届けることができます。ただ、点滴には栄養素だけでなく、水分も多く含まれています。

多過ぎる水分は体をむくませるだけでなく、心臓や腎臓にも大きな負担がかかります。

そのため、緊急時を除いて点滴はゆっくりと時間をかけて投与するのが基本です。

例えば「今から2Lの水を1時間で飲んで下さい」と言われたとします。
あなたにはできますか?

飲めないことはないけど……
すごくしんどいんじゃない?

若くて健康な方でも、1時間で2Lの水を飲むのは体に負担がかかります。私も想像してみましたが、かなり頑張らないと難しいと思います。

特に心臓や腎臓に病気をお持ちの方は、医師から「水分は1日1リットルまで」などの指示が出ている場合があります。

実は血液の大半は水分で構成されており、飲んだ水分も血液として全身を巡ります。

水分を摂り過ぎると心臓や腎臓の仕事量が増え、負担をかけてしまいます。

在宅でも栄養剤の点滴投与ができる!

点滴は病院だけでなく、実は自宅でも受けることができます。

最近多くの病院で、入院期間を短くするという方針が進められています。その影響もあり「最期の時を自宅で迎えたい」と希望される方も増えています。

私は現在、訪問看護師として様々な方のお宅へ訪問させて頂いていますが、口から食事が摂れず点滴で栄養を投与されている方もいらっしゃいます。

利用者様のご家族
利用者様のご家族

まさか家で点滴ができるなんて思わなかったわ。
最初は点滴の袋を交換するのも怖かったけど、もう慣れちゃった。

通常の場合、医師もしくは看護師しか点滴の管理を行うことはできません。

しかし、在宅で点滴を投与する場合は医師か看護師の指導の元で、ご家族様での管理ができます。

中心静脈の場合、針の交換を看護師の訪問時に行い、栄養剤の交換はご家族様が行う、といった風に分担して管理する場合もあります。

中にはご家族様が看護師をされているというケースもあり、「私がやっておくよ」と協力して下さる方もいらっしゃいます。

訪問看護を受けるためには、医師からの「訪問看護指示書」が必要となります。

もし訪問看護を検討したい場合、主治医や担当のケアマネージャーへ一度ご相談下さいね。

点滴で栄養を投与することのデメリット

点滴での栄養投与は、栄養状態の改善に対して非常に有効な方法です。一方で、デメリットや注意が必要な点もあります。

  • 胃や腸を使わないので、消化管の機能が低下する可能性がある。
  • 針や管を介して細菌などが入ると、感染症を起こす危険性がある。
  • どこかに引っ掛けた拍子に、針が抜けてしまうことがある。認知症の方の場合は「点滴を受けている」という認識がなく、自分で針や管を抜いてしまうことがある。
  • 医療的な管理が必要とされる。

点滴の合併症で多いのが、感染症です。特に中心静脈の場合、血流が早いため侵入した細菌があっという間に全身に回ってしまいます。

このような医療事故を防ぐため、
病院では「感染対策マニュアル」がしっかりと定められています。

寿命が近付くと人の体は水分を処理できなくなる

人の体は食べ物から栄養や水分などを吸収したり、不要なものを体外へ排出するなど様々な処理を行なっています。しかし、余命が少なくなるとその処理能力も低下します。

栄養剤に含まれる水分も処理できなくなり、全身がむくむ、お腹や胸に水が溜まる、痰が増えるといった症状が現れるようになります。

医師
医師

「最期は無理に栄養や水分を入れずに、体を脱水気味にする方がご本人様にとって楽だと思うんだ」

私が新人の時に、医師から言われた言葉です。人の体の仕組みから考えると、確かにその通りだと思います。

患者様のご家族
患者様のご家族

できる限りのことをして、少しでも生きていて欲しいんです……

こちらは、ご本人様の意識が既になく、看取りが近い患者様のご家族様から言われた言葉です。

主治医の考えも、ご本人様とご家族様の希望も、どちらも分かるからこそ「より良い最期を迎えられるためには」と考えながら患者様と関わっています。

人生の集大成を自分らしく最期を迎えられるように

これ以上病気に対する治療効果が期待できず、余命が数ヶ月になった段階を「終末期」と言います。

終末期は「人生の集大成」でもあり、その人らしい最期を迎えることが看護では重要だと教わりました。

「家族に見守られながら逝きたい」、「家族に迷惑をかけたくない」、「施設だけは絶対に嫌」など、様々な希望を聞いてきました。

ちなみに私の祖母(80代)と母(50代)は、こう希望しています。

私の祖母
私の祖母

自然の成り行きに任せたいから、延命はしないでね。
できたら家で死にたいけど、まあその時の状況で考えるわ。

私の母
私の母

私はあんたに迷惑かけたくないし、施設に入れてね!
たまに会いに来てくれたらいいわ!

今までは「死」を連想させるような会話は避けられる風潮でしたが、最近では「終活」という言葉が浸透しました。

私も祖母や母へストレートに尋ねた訳ではなく、「本屋にエンディングノートなんてあったんだけど、知ってる?」という感じで話題にしました。

家族の希望を知るだけでなく、人生観も垣間見えるので「最期をどう迎えたいか」を話しておくことは、とても大事だと思います。

まとめ

  • この記事に書かれていることは、あくまで一般論なので治療方針などは医師に相談する。
  • 点滴の投与方法には、細い血管である「末梢静脈点滴」と太い血管である「中心静脈点滴」の2種類がある。末梢静脈点滴は一時的な症状の改善のために、中心静脈点滴は長期的な栄養剤や薬剤投与のために適応されることが多い。
  • 末梢静脈からの栄養剤投与では平均2〜3ヶ月、中心静脈からの投与では平均6〜8ヶ月寿命が延長されると言われている。
  • 中心静脈点滴はカテーテルやポートといった機器を使用し、高カロリー輸液の投与も可能。
  • 基本的に中心静脈からの栄養剤投与は24時間などゆっくり時間をかけるため、血糖値が安定しており空腹を感じない。
  • 栄養剤の点滴速度や時間は、その人の状態や点滴の内容によって異なる。特に心臓や腎臓に病気を持っている方は、水分量によって体に負担がかかるので注意が必要。
  • 寿命が近付くと水分の処理ができなくなり、過度な水分投与はむくみや痰を増やすことになる。
  • どんな最期を迎えたいか、普段から家族で話しておくことが大切。

この記事を読んでくださったあなたは、ご自身や身近な人の病気や寿命などに対する心配や不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

点滴を中心に看取りについて解説しましたが、あくまで一般論であり絶対的な正解はありません。

ただ、遺された側は「もっと何かしてあげられたんじゃないか……」という気持ちを強く感じてしまいますよね。

ご本人様が「これで良い」と思える最期を迎えられたら、それが正解になります。

人生の集大成を後悔なく迎えられるよう、この記事が少しでも助けになれば幸いです。

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