鶏胸肉を低温調理する時に最も重要なことは温度と時間を守ることです。
鶏胸肉を湯煎する時の最低温度は60℃で、短くても60分は時間をかけないとカンピロバクターやサルモネラ菌による食中毒の恐れがあります。
私は以前ダイエットしていたときに鶏胸肉を低温調理したサラダチキンを意識的に食べるようにしていました。
高たんぱくで低カロリーなサラダチキンは自宅で簡単に作れると一時期ブームにもなりましたが、温度や時間を間違うと食中毒のリスクが高まりとても危険です。
この記事では鶏胸肉のパスチャライゼーション(低温殺菌法)や低温調理された鶏胸肉の保存方法について、また炊飯器を使った簡単アレンジレシピもご紹介します。
正しい低温調理方法を知り自分で調理すると、ジューシーで美味しい鶏胸肉が安全に味わえますよ♪
鶏胸肉の低温調理は温度を厳守して安全に食べよう
低温調理とは約60℃~70℃の比較的低い温度で湯煎して食材を調理する方法です。
鶏胸肉を上手く低温調理するときに大事なポイントは温度を維持することです。
鶏胸肉は70℃以上の高温で一気に火を通すと、胸肉に含まれているたんぱく質が収縮してしまうため、固さやパサつきの原因となります。
また、低温調理は加熱温度が低いため、中まで完全に火を通すのに時間がかかり、加熱不足による食中毒のリスクもあるのです。
私は鶏胸肉を低温調理してサラダチキンを自分で作ってみようと思い、色々なレシピを検索していました。
するとレシピによって55℃から60℃、63℃や65℃など低温調理時の温度に違いがあり、どれが一番正しい温度なのかよく分からなくなってしまいました。
では鶏胸肉を低温調理する時に一番適した温度とは、一体何度なのでしょうか?
鶏胸肉の低温調理は63度~68度未満が最適温度である
厚生労働省によるとサラダチキンをはじめとする特定加熱食肉製品は、中心部の温度が63℃で30分間加熱されていることが安全である基準となっています。
そのことから低温調理するときの温度は最低でも63℃以上であることが必須であると私は考えました。
鶏胸肉が固くなり始める温度は68℃以上からと言われています。
柔らかくジューシーな鶏胸肉を味わうためには63℃から68℃未満の間の温度で低温調理することが最適な温度と言えるでしょう。
私はいつもスーパーで販売されている鶏胸肉を買いますが、きちんと調理してもまれにゴムの様に固い食感の鶏胸肉に当たることがあります。
鶏胸肉がゴムのように固い原因と美味しい鶏胸肉の選び方については、こちらの記事でも詳しくご紹介していますので、ご覧ください。
鶏胸肉のパスチャライゼーションは時間がかかる
鶏胸肉を低温調理する時は温度の他に時間も大事なポイントの一つです。
生の鶏胸肉はそのままだと既に色々な菌に汚染されているので、しっかりと完全に火を通して人の体に有害な菌をなくすことが重要です。
鶏胸肉を美味しく安全に食べられるように摂氏100度以下の温度で低温殺菌する方法をパスチャライゼーションといいます。
内閣府が運営する食品安全委員会によると、鶏肉のパスチャライゼーションは次のようになります。
中心温度 | 時間 |
---|---|
63℃ | 30分 |
65℃ | 15分 |
66℃ | 11分 |
67℃ | 8分 |
68℃ | 5分 |
69℃ | 4分 |
70℃ | 3分 |
75℃ | 1分 |
75℃で1分と同等の加熱殺菌効果があるのは、63℃の場合だと30分かかるということになります。
食品安全委員会では質量300g厚さ3㎝の鶏胸肉をジップロックに入れて63℃のお湯に漬けると、内部温度が63℃になるまで70分かかったという実験結果があります。
それからパスチャライゼーションするため、63℃を維持したままさらに30分間加熱が必要ですので、合計100分サラダチキンを作るのに時間がかかるのです。
私は、低温調理をすると簡単に茹でるだけでサラダチキンができると思っていたのですが、こんなにも時間がかかり、温度管理が大切であるとは思いもしませんでした。
加熱時間が不十分な鶏肉は見た目では区別がつかない
引用 内閣府 食品安全委員会
食品安全委員会は、鶏肉の加熱時間において、一定の温度と時間が管理され基準を満たした状態と加熱不十分だった状態での鶏肉の外観の違いを調べました。
上の写真を見て、しっかり加熱されたものと加熱不十分のものとを比較すると、どの温度でもその見た目にほとんど違いはありません。
つまり、自分で温度と時間を自己流にアレンジしても見た目でパスチャライゼーションできているかを判断することはとても難しいのです。
また、鶏肉によっては大きさや重さ、肉の厚みによっても内部温度が基準値になるまでの時間も違いがでてくるでしょう。
したがって低温調理器メーカーが指定するレシピなどに沿って正しく調理して、肉が大きい場合には加熱時間を延長するなどの対策をとることがとても重要です。
私は自分で温度を長時間管理することがとても大変だなと思ったので、安全に調理するためには、低温調理器を使ってマニュアル通りに作ることが一番安心できるなと感じました。
カンピロバクターによる食中毒の危険性を知ろう
引用 内閣府 食品安全委員会
鶏肉に含まれる注意するべき食中毒菌はカンピロバクターです。
サラダチキンのブームに加え、柔らかくジューシーな美味しさを追求するため、鶏肉の加熱不足による食中毒が増えています。
カンピロバクターは肉を扱う料理をする時には、私たちの身近に存在している細菌ですが、とても危険な毒性があります。
カンピロバクターに感染する原因や予防法について見ていきましょう。
生の鶏肉を調理したり食べる場合は注意が必要!
以前私の父親は、鶏肉の刺身を食べた後に食中毒になり、カンピロバクター腸炎と診断されたことがあります。
数日間、発熱と嘔吐を繰り返しとても辛そうで、父親本人もそれ以来二度と鶏の刺身は食べたくないと言っていました。
(前略)カンピロバクターに感染すると、比較的少ない菌数(数百個程度)でも腸炎を発症し、発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢、血便等の症状を起こします。腸炎での死亡率は低いのですが、まれに感染後に神経疾患であるギラン・バレー症候群を発症することもあります。(後略)
引用 内閣府 食品安全委員会
「ギラン・バレー症候群」とは感染した数週間後に手足や顔面の麻痺・呼吸困難を引き起す病気です。
少ない菌でもすぐに感染し、子供や高齢者、抵抗力が落ちている人は症状が重くなる場合があるので注意が必要です。
カンピロバクターによる食中毒の予防ポイントは3つ!
カンピロバクターによる食中毒は、時期を問わず一年中いつでも発生する可能性があります。
カンピロバクターによる食中毒にならないための予防方法を知っておくことは、家族のために食事を作り、健康を守る上でとても大切です。
カンピロバクターは冷蔵や冷凍温度下でも長時間生存しますが、加熱処理(75℃で1分以上)で死滅すると言われています。
私も生の鶏肉を調理したまな板や包丁は、必ず熱湯消毒を心がけるようにするわ!
このような衛生の知識を持たずに低温調理を実践することはとても危険であり、知らぬ間に食中毒のリスクを高めてしまっているのではないでしょうか。
殺菌・消毒をきちんと行い、温度と時間を守りながら安全を確保して初めて低温調理が料理として成り立つのだと思います。
低温調理した鶏胸肉は冷凍で約1か月保存できる
鶏胸肉を手作りで低温調理した場合、保存はどのくらいできるのか気になります。
私だったらせっかく時間をかけて作るので量も多めに作りたいですし、作ったら食べきれずに無駄になることは避けたいですよね。
冷蔵保存する場合は、乾燥しないようにラップで包み、蓋つきの容器に入れて保存します。
冷凍保存の場合はラップに包んでからジップロックなどの密閉できる袋に入れると良いでしょう。
保存方法は他の食材を冷凍する時と同じなので簡単ね!
冷凍だと1か月も保存できるので、タレを絡めてお弁当のおかずにアレンジしたり幅広く使えそうです。
解凍する時は長い時間をかけてでも冷蔵庫に入れてゆっくりと解凍すると、水分を保ったままのジューシーな鶏胸肉を味わえますよ。
炊飯器で低温調理は可能!注意点と簡単レシピをご紹介
低温調理について調べていると、炊飯器で簡単に低温調理ができサラダチキンが作れるといった情報やたくさんのレシピが掲載されていました。
しかし、低温調理をする上では徹底した温度と時間の管理が必要で、それができないと食中毒の危険性があります。
確かに炊飯器は保温機能があり保温している時間は分かりますが、温度は何度で保たれているのかわからない炊飯器が多いのではないかと思い、私は不安を覚えました。
そこで、炊飯器で低温調理は可能なのか、調べてみることにしました。
炊飯器の保温温度は低温調理器よりも高い
低温調理器と炊飯器の違いは、調理する温度です。鶏胸肉の低温調理では63℃~68℃未満での加熱が理想的ですが、一般的な炊飯器の保温温度は60℃~75℃です。
炊飯器の機種によりますが、内部で設定されている保温温度が60℃であれば、鶏胸肉を低温調理するには低い温度になり危険ですし、75℃では逆に高くなり熱が入りすぎてしまいます。
そのため低温調理器と炊飯器では仕上がりに差が出てしまうのです。
炊飯器では温度管理がとても難しく、熱の伝わり方も低温調理器とは違うので、鶏胸肉にしっかりと火が通っていなかったり、入りすぎてパサパサになる可能性があります。
私の家の炊飯器は保温設定ができず、何度で保温されているのかもよく分からないから、実際に調理するとなると不安が残るわ…
できあがった鶏胸肉は見た目では火が通っているのか判断が難しいので、やはり低温調理器での調理が理想的だなと思いますが、炊飯器で安全に調理できる方法はないのでしょうか?
炊飯器の保温機能で上手に低温調理する方法
炊飯器の保温機能を使って、低温調理するには次の3つのポイントが大切です。
- 温度調節できる炊飯器を使う
- 加熱部分に偏りがあるので、途中でひっくり返す
- 温度計で適切な温度を測って確認する
炊飯器の機種によっては保温機能の設定が行え、私の実家の炊飯器には「高温」と「低温」モードがあり、どちらかを選べるようになっていました。
高温モードは70℃を超えてくるので、低温調理に使う場合は低温モードを選ぶと良いでしょう。
また、炊飯器の保温機能では、底の方に熱源が集中する仕様になっているものが多く、均一に火を通すために途中で鶏胸肉をひっくり返す必要があります。
低温調理器は水が循環するようになっているので、そのような手間はかかりません。
さらに安全を保障するために、温度計で適宜炊飯器内のお湯の温度を測って、規定の温度であることを確認する方が食中毒予防にも効果的です。
鶏胸肉をひっくり返してその時に温度も確認すれば、私の家の炊飯器でも低温調理ができるわね!
炊飯器を使った鶏胸肉の低温調理レシピ
炊飯器で簡単に鶏胸肉の低温調理ができると話題にもなり、実際に実践されている方も多いと思います。
しかし、たくさんあるレシピの中には温度設定によって加熱不十分になるものもあり、内容を見極めることが必要です。
そこで、炊飯器を使って安全に低温調理ができるレシピをご紹介したいと思います♪
- 鶏胸肉…1枚
- オリーブオイル…1/4カップ
- A 味噌…大さじ3
- A 酒…大さじ2
- A おろしにんにく…小さじ1/2
- 準備炊飯器に入れる熱湯を沸かしておく
内部まで火を確実に通すため必ず80℃以上のお湯を用意する
- 1.鶏胸肉の全体をフォークで刺して穴だらけにする
- 2.密閉袋に鶏胸肉とAを入れて揉みこみ、冷蔵庫で一晩漬けこむ
- 3.翌日、2の袋にオリーブオイルを加えて揉み、再び密閉する
- 4.炊飯器に鶏胸肉を袋ごと入れ目盛りいっぱいまで熱湯を注ぎ、2時間保温する
途中必ず温度計を用いて、温度が63℃以上あるかを確認する
- 5.加熱が終わると取り出して、粗熱を取り冷蔵庫で完全に冷やす
加熱する前にオリーブオイルを入れることによって、袋内の密閉度が高まると、オイルを通して熱が胸肉内に伝わりやすくなる効果があり、より安全な調理に繋がります。
でき上がったサラダチキンの付け合わせとして、トマトや刻みネギ、柚子胡椒やわさびをつけていただくとさらに美味しく食べられますよ。
晩酌のお供にピッタリの美味しさだわ!
十分な温度と時間を確保できれば、家にある炊飯器でも低温調理が楽しめますね♪
まとめ
- 鶏胸肉の低温調理で大事なポイントは温度を63℃~68℃未満の状態を維持することである。
- 鶏胸肉の低温調理はパスチャライゼーションして加熱時間を十分に確保することが大事である。
- 加熱不十分な鶏胸肉は見た目では区別がつかず、自己流で温度と時間を管理することは危険である。
- 鶏胸肉の低温調理はレシピ通り正しく調理して、大きさにより加熱時間を延ばすことが重要である。
- 鶏肉に含まれる主な食中毒菌はカンピロバクターであり、少しの菌でも腸炎を発症し発熱・腹痛・下痢・嘔吐などの症状を引き起こす。
- カンピロバクターによる食中毒の予防ポイントは、食肉を十分に加熱し、調理器具を熱湯消毒すること、調理時や保存時に他の食材への二次感染を防ぐことである。
- 低温調理した鶏胸肉の日持ちは、冷蔵保存で約4日、冷凍保存では約1か月保存できる。
- 炊飯器での低温調理は温度管理が難しく、熱の伝わり方も低温調理器とは違いがあり、しっかりと火が通らないことや、火が入りすぎてパサパサになることもある。
- 炊飯器の保温機能を使って低温調理するとき、加熱部分が偏らないように途中でひっくり返し、温度計を使って適切な温度を確認することが必要である。
- たくさんあるレシピから安全なものを見極め、十分な温度と時間を管理できれば、家にある炊飯器でも低温調理が楽しめる。
ダイエット中の人や筋力アップを目指している人の食事の味方であるサラダチキンですが、私は今まで茹でるだけで簡単に作れると思っていました。
しかし今回調べた結果、鶏胸肉の低温調理時の温度と時間の管理が非常に重要で、それを誤ると危険な食中毒に健康が侵されてしまいます。
家族の健康を守るためにも、普段の調理から生肉の扱いには十分気をつけて、しっかりと殺菌・消毒対策していこうと改めて考える機会となりました。
低温調理するときに、まず一度、衛生面や安全面を振り返ってから、美味しくてジューシーな鶏胸肉を味わっていただければと思います♪